AIを開いて、入力欄の前で手が止まる。「何て書けばいいのか分からない」。研修の場でいちばんよく見る光景です。使い方が分からないのではなく、書き出しが分からない。
結論から言うと、3つのブロックを順に書くだけで、返ってくる答えは一気に変わります。専門的なプロンプト技法の話ではありません。今日から使える範囲の話です。
先にまとめ
前提 → 依頼 → 出力形式。この順に書きます。自分が誰でどんな状況かを先に伝え、やってほしいことを1つに絞り、返してほしい形を指定する。これだけで、直したくなる出力がぐっと減ります。一発で満点は出ません。会話で仕上げる前提で始めてください。
何から書けばよいか分からない方に向けた内容です。高度なプロンプト技法を求める方には向きません。
覚えるのは3つのブロックだけ
プロンプトのコツを集めた記事はたくさんあります。ただ、最初に必要なのは3つです。前提、依頼、出力形式。
| ブロック | 書く内容 | 省くとどうなるか |
|---|---|---|
| 前提 | 自分が誰で、どんな状況か | 世界中の人に向けた一般論が返る |
| 依頼 | やってほしいこと1つと、相手のレベル | 焦点がぼやけ、浅い答えになる |
| 出力形式 | 見た目、長さ、構造 | 毎回、整え直す作業が発生する |
順番も大事です。前提から書くと、AIは文脈を掴んでから答えを組み立てられます。逆に依頼から書き始めると、途中で前提を足しても、最初の方向のまま進むことがあります。
1つめ:前提を書く
自分が誰で、どんな状況でAIを使っているか。ここを省くと、返ってくるのは誰にでも当てはまる一般論になります。
あなたは、社員8名の建設会社の業務改善を手伝うコンサルタントです。 私は、その会社の総務担当です。社内にITに詳しい人はいません。
ここで書くのは、立派な肩書きではありません。相手が知っておくべき制約です。社内にITに詳しい人がいない。前例がない。予算が限られている。決裁は自分では出せない。こうした事情を1行入れておくと、実行できない提案が返ってこなくなります。
たった2行です。それでも、出てくる答えの手触りは変わります。専門用語の量が減り、例が業種に寄る。ここを書かないまま「分かりにくい」と感じている人は、けっこう多いです。
2つめ:依頼を書く
やってほしいことを1つに絞ります。「これもこれも」と詰め込むと、どれも浅くなる。分けて聞いたほうが、結果的に早く終わります。
社内向けに「請求書の電子化」の手順書を作ってください。 読む人は、パソコンは使えるが専門用語には慣れていない社員です。
詰め込みたくなったら、分割の合図です。「手順書を作って、ついでに社内メールの文面も、あと想定質問も」。3つとも必要なら、3回に分けます。1回目の答えを見てから2回目を書くほうが、精度も上がります。
「〇〇について書いて」で止めないのがコツです。誰に向けて、どのレベルでまで入れる。読む人が決まると、言葉の選び方まで決まります。
3つめ:返してほしい形を指定する
箇条書きか、表か。何ステップにまとめるか。どのくらいの長さか。ここを伝えると、そのまま業務で使える形で返ってきます。
5ステップの手順にしてください。 各ステップは、見出し1行+説明3行以内。 専門用語を使うときは、かっこ書きで言い換えを添えてください。
形の指定で意外と効くのが、長さです。「A4で1枚に収まる分量で」「メールにそのまま貼れる長さで」。文字数より、使う場面で指定したほうが、感覚が合いやすくなります。
ここを省くと、「長すぎる」「短すぎる」「見出しの粒度がバラバラ」といった、直したくなる出力が返ってきます。直す時間を考えると、3行書いたほうが早い。
つなげると、こうなる
3つをそのまま並べるだけです。整った文章にする必要はありません。
あなたは、社員8名の建設会社の業務改善を手伝うコンサルタントです。 私は、その会社の総務担当です。社内にITに詳しい人はいません。 社内向けに「請求書の電子化」の手順書を作ってください。 読む人は、パソコンは使えるが専門用語には慣れていない社員です。 5ステップの手順にしてください。 各ステップは、見出し1行+説明3行以内。 専門用語を使うときは、かっこ書きで言い換えを添えてください。
ブロックを分けておく利点は、もう1つあります。あとから「この部分だけ直して」と言いやすいことです。全部を書き直させるより、はるかに速く仕上がります。
一発でうまくいかないとき
最初から満点は出ません。出ないのが普通です。ここから会話で仕上げます。
「3つめのステップだけ、もう少し初心者向けに書き直して」。「全体のトーンを、もう少しやわらかく」。「専門用語を3つ以上使わないでほしい」。この形で足していくのが、いちばん速い直し方です。
それでも噛み合わないときは、3つのブロックのどれが足りなかったのかを疑ってみてください。答えが一般論なら前提が足りない。話があちこちに飛ぶなら依頼が多すぎる。整えるのに時間がかかるなら出力形式を書いていない。だいたい、この3つのどれかに当たります。
逆に効率が悪いのは、最初のプロンプトを何度も書き直すことです。1行目から作り直すと、良かった部分まで一緒に消えます。出てきたものを見ながら削っていくほうが、手数が少なくて済みます。
うまくいったプロンプトは、残しておく
もうひとつだけ。良い答えが返ってきたときのプロンプトは、その場で捨てないでください。前提のブロックは、たいてい次の依頼でもそのまま使えます。
会社名、業種、人数、読者の想定。この4行を1回書いておけば、次からは依頼と出力形式だけで済みます。使い回せる前提を持っている人は、毎回ゼロから書いている人より、単純に速い。差がつくのは、たいていここです。
まとめ:書き出しに迷わなくなる
前提、依頼、出力形式。この3つを順に書く。それだけで、返ってくるものの質は変わります。凝ったテクニックは、その後で構いません。
社内へ広げるときも、この3ブロックだけ共有すれば足ります。細かいコツを配るより、型を1つ配るほうが定着します。使いながら、自社に合う言い回しが溜まっていきます。
冒頭の、入力欄の前で止まる時間。あれは書く力の問題ではなく、書く順番を知らなかっただけでした。順番さえ決まっていれば、手は動きます。
社内の AI 活用、スタート時に伴走します
「社内で AI を使いこなせるようになりたい」「チームにプロンプトの型を共有したい」── そのあたりの社内教育やテンプレ整備も、i-Style の仕事です。お気軽にご相談ください。
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