「ルールを書き足すほど、AIは賢く動くはず」と思いますよね。AIに仕事を任せるために、手順書やルールを書き足す。i-Styleもそうしてきました。
先に数字を出します。作業ごとの手順書(スキルと呼びます)が97本あり、直近30日で実際に使ったのは21本でした。残りは一度も呼ばれないまま、説明文だけが毎回読み込まれていました。
数えたきっかけは、2026年9月11日にOpenAIの開発者ブログが出した記事です。モデルが賢くなったぶん、これまで効いていた指示が、いまは足を引っぱるという内容でした。
先にまとめ
見直す場所は4つあります。スキルの説明文と中身、AIへの指示書(AGENTS.md)、禁止や確認を求める言い方、そして「どこまでやったら終わりか」の決め方です。どれから直すかは、数えたあとに決まります。
着手は数えるところからです。i-Styleの手元では、直近30日で一度も呼ばれなかったスキルが76本あり、その説明文だけで全体の79%を占めていました。
強い禁止の言葉には気をつけてください。判断の質が上がったモデルはその言葉を真に受けすぎて、進めてほしい場面でも止まることがあるとOpenAIは書いています(2026年9月11日の記事本文で確認)。
賢くなったぶん、書き足した指示が足を引っぱる
AIに仕事を頼むとき、その場の依頼文だけで動いているわけではありません。裏側には、会社ごとの決めごとを書いたファイルと、作業別の手順書が読み込まれています。
前者はAGENTS.mdと呼ばれるファイルです。プロジェクトの中に1枚置いておくと、AIがその場所で作業するたびに読みます。中身が公開されている開発プロジェクト6万件以上で使われていて、置き場所としては業界で共通になっています。
呼び名がCLAUDE.mdのこともありますが、役割は同じです。
後者はスキルと呼ばれます。「請求書を作るときの手順」「返信文の型」のように、作業ごとの手順を1ファイルにまとめたものです。i-Styleでも、ブログの書き方から月初の経理まで、気づけば97本まで増えていました。
問題はここです。手取り足取り書かないと動かなかった時期に作った指示が、そのまま残っています。OpenAIの記事は、そうした指示が今のモデルには過剰で、かえって結果を悪くすると書いています。
マメ
うちは5人で、AIに手順書を書いたのは去年の話です。今も動いているので、触らないほうが安全ではないですか。
ホク
動いているように見えて、選ばれ方が変わっていることがあります。手順書が増えると、AIはどれを使うか迷います。迷った結果、今の作業に関係ない手順書を読んでしまうことが起きます。
マメ
関係ない手順書を読むと、何が困るんですか。
ホク
読んだぶんだけ、AIが一度に覚えていられる量を使います。頼んだ仕事に使える余地が減って、途中で話を忘れます。5人で使っているなら、まず何本入っているかを数えるところからです。
手元の97本を数えたら、30日で使ったのは21本だった
指摘が自社に当てはまるのか、実際に数えて確かめました。やってみると、思っていたより偏っていました。
入っていたスキルは97本でした。それぞれに「いつ使うか」を書いた説明文が付いていて、AIはどれを使うか決めるためにその説明文を渡されます。本数が増えると、この説明文はAIに届く前に途中で切られます。全部を足すと、2万1,504文字ありました。
原稿用紙50枚を超える量です。1行の質問をする前に、これだけの文章を渡していたことになります。
実測で分かっていること
直近30日の作業記録を調べたところ、実際に呼ばれたスキルは21本で、76本は一度も呼ばれていませんでした。その76本の説明文だけで1万6,976文字あり、全体の79%を占めます(Claude Code/macOS 26.6.2/2026年9月12日実測)。
どの言葉で呼び出されるかも重なっていました。「レポート」という言葉で動きそうなスキルが11本、「資料」で7本、「チェック」で7本ありました。同じ言葉で複数が候補に挙がる状態です。どれが選ばれているかは外から見えないため、選び分けができているかまでは確かめていません。
この数え方には限界があります。記録に残らない読み込みや、30日より前だけ使ったものは拾えていません。説明文を短くしたら選ばれ方が変わるのかも、本番の設定を書き換えることになるため測っていません。それでも79%は無視できない大きさでした。
79%が使われていないなら、直す場所は説明文から順にあります。以下、4か所を上から見ていきます。
スキルの説明は「いつ使うか」だけに削る
OpenAIの記事は、説明文を短くしろと書いています。理由は文字数そのものではなく、多すぎるとAIに渡る前に説明が途中で切られてしまい、選ぶ判断が雑になるからです。
悪い例として挙げられていたのは、適用範囲を広く書いた説明です。さきほどの「レポート」で11本というのが、まさにその状態でした。報告書を1枚作るだけの依頼でも、11本が候補に挙がります。呼ばれてほしい場面を1つに絞れば、そこだけで呼ばれます。
スキルについては、直す場所が3か所あります。OpenAIの記事が挙げた指摘を、i-Styleの言葉で整理したものです。
| 直す場所 | やめる書き方 | 残す書き方 |
|---|---|---|
| スキルの説明 | 関わりのある話題を並べる | 呼ばれてほしい場面を1つに絞る |
| スキルの中身 | 全部を1枚に詰め込む | 入口を短くし、詳細は別ファイルに置く |
| 手順の細かさ | 段取りを一手ずつ指定する | 守ってほしい線だけ書き、進め方は任せる |
原典が「役に立つスキルの目印」として挙げていたのは、2つ目のスキルの中身の置き方です。1枚に全部書くと、AIはその作業に関係ない部分まで読みます。入口を目次だけにして、必要になったら別のファイルを開かせる形にすると、読む量が場面ごとに変わります。
手順の細かさは、書いた側が納得しにくいところだと思います。細かく指定したほうが安心だからです。ただ今のモデルは、あいまいな部分を自分で補えるようになっています。手順を固定すると、その固定した順番より良いやり方があっても選べません。
i-Style では、この記事を読むまで説明文の長さを気にしていませんでした。むしろ「どういうときに使うか」を漏れなく書こうとして、200文字を超えるものが47本ありました。書き足した側の理屈では正しかったのですが、AIに選ばせる側から見ると、逆でした。
AGENTS.mdから「毎回◯◯しろ」を外す
AGENTS.mdは、そのプロジェクトで作業するたびに必ず読まれます。だからこそ、ここに書いた1行の重みは大きくなります。
同記事が挙げた例では、編集の前に3つの資料を必ず読ませる指示が対象になっていました。誤字を1文字直すだけの作業でも、資料を3つ読んでから始めることになります。
i-Style でも同じことが起きていました。毎回読み込む指示書8ファイル524行を「必ず」「毎回」で検索すると、49行が出ました。いちばん多いのは出力の書式を決めたファイルで27行です。
「答えを返す前に必ず同期を確認する」「出力前に必ずコマンドで日付を確かめる」のように、作業のたびに手を止めさせる形です。書き換え方は決まっていて、必ず読ませるのではなく、どの話のときにどれを見るかを書く形にします。読む判断はAIに渡します。
ただし49行のうち何本が不要になったかは、まだ判定していません。1行ずつ読んで決める作業が残っています。
テストの指示も同じです。以前のモデルは、自分で動かして確かめるよう促す必要がありました。今のモデルは頼まなくても確かめるので、同じ指示が残っていると、確かめる必要のない場面でも走ります。
ここまでは、書きすぎた指示を削る話です。次は逆に、削るのではなく書き換えたほうがよい指示の話になります。
強い禁止の言葉は、賢いモデルほど効きすぎる
ここがいちばん意外でした。以前のモデルが勝手に進めてしまうのを止めるため、「必ず確認を取れ」「勝手に変更するな」と強く書き足した覚えがあるなら、そこが対象です。
OpenAIは、その書き方を見直すよう促しています。新しいモデルGPT-6 Astraは安全かどうかを自分で判断できるため、強い禁止の言葉を真に受けすぎて、進めてほしい場面でも止まる、というのが理由です。
代わりに書くのは、許可の範囲です。記事には、本番に影響しない手元のテストであれば、失敗を直しながら最後まで進めてよいと書き添える例が載っていました。禁止を並べるのではなく、安全だと分かっている作業に許可を与える形です。
ただし、この書き換えを全部に当てはめないほうがよいと捉えています。お金が動くこと、外部に送ること、消すことは、確認を挟んだままにしておくほうが安全です。許可を広げるのは、失敗しても元に戻せる作業からです。許可の線を引き直しても、途中で止まる場面は残ります。
「どこまでやったら終わりか」を依頼文に書く
これは削る話ではなく、指示書を増やさずに済ませる話です。以前のモデルは、頼んだ仕事を長く続けてくれました。GPT-6 Astraは一区切りついたところで手を止め、確認を求めてきます。
対処は、頼むときに終わりを決めておくことです。作って動かして、結果を見て、直すところまでを1つの依頼にします。「まず作って見せて」と書くと、そこで止まる依頼になります。
これは中小企業にとって扱いやすい話だと見ています。指示書に「最後までやれ」と書き足す必要はありません。依頼文の最後に1行書けば足りるので、棚卸しの対象には入りません。
中小企業がまずやる3つ
自社で数えてみて、順番があると感じています。説明文の書き方を直すより先に、数を減らすほうが効きます。
1つ目は、入っている手順書を数えることです。何本あるか答えられない状態なら、そこが出発点です。i-Style でも97本という数字を、今回初めて把握しました。
2つ目は、直近1か月で使ったものを分けることです。置き場所は道具ごとに決まっていて、フォルダを開いて名前を書き出すだけで一覧になります。この1か月で実際に呼ばれたものに印を付け、思い出せないぶんはその一覧をAIに渡して聞けば絞れます。
3つ目は、残したものの説明文を1行にすることです。どういうときに呼ばれてほしいかだけを書きます。関わりのある話題を並べるのは、ここでやめます。どれを削るかの案出しは、OpenAIの記事も勧めているようにAIへ渡せます。
増やす工程だけを整えて、棚卸しの工程を用意していない状態になりやすいところです。i-Styleも、指示書を軽く保つ話は2026年8月に一度書いておきながら、本数を数える工程は運用に入れていませんでした。
確かめた資料はOpenAIの開発者ブログとAGENTS.mdの仕様
指示の見直しについては、OpenAIの開発者ブログ「Rethinking skills and prompts for GPT-6 Astra」(2026年9月11日)を原典として読んでいます。要約記事ではなく本文から取り、日本語は要約です。
AGENTS.mdがどういう位置づけのファイルなのかも、公式サイトで確かめました。人向けのREADMEとは別に、AI向けの指示を置く場所として用意されたものだと記載されています。
手元の数字は、i-Styleの環境で1回測った値です。直近30日の作業記録2,924件を、2026年9月12日に集計しました。97本のうち説明文が付いているのは96本で、文字数はその96本ぶんです。
使っている道具はClaude Codeで、OpenAIの記事が扱っているCodexは同種の別の道具です。指示書と手順書という仕組みは同じですが、説明文の扱い方まで同一だと確かめたわけではありません。入れているスキルの数も会社ごとに違うので、同じ比率になるとは限りません。判断の前に、ご自身の環境でも数えてみてください。
i-Styleに相談する
AIに書かせる指示は、増やすところまでは誰でもできます。難しいのは、どれが効いていないかを見分けるところです。i-Styleの「まるっとAI」では、AI活用支援のひとつとしてお手伝いできます。いま入っている手順書とルールを並べ、残すものと外すものを決めるところからです。
お問い合わせページへ arrow_forwardそこまででもない、という段階なら、右下のチャット窓口で「何から手を付けるか」を整理するところからでも十分です。