ある日、担当者がお客様からのメール本文をそのままAIに貼り付けて、要約させていた。悪気はまったくありません。むしろ、仕事が速い人ほどやります。問題は、それが良いのか悪いのか、社内の誰も決めていなかったことでした。
ChatGPTを使い始める会社は増えました。最初の一歩でいちばん大事なのは、どう使うかより先に何を決めておくかです。決めないまま広がると、便利さの裏に、情報の不安と、誤りの混入と、責任のあいまいさが残ります。
先にまとめ
決めるのは5つだけです。入れてよい情報、確認する人、使ってよい業務、社外に出す前の手順、良い使い方の共有先。最初から完璧な規程は要りません。むしろ、長い規程ほど読まれず、守られません。A4で1枚に収まる分量から始めます。
社内でChatGPTの利用を始める、または広げる立場の方に向けた内容です。すでに厳密なAI統制の基準を持つ大企業の専門部門には向きません。
ルールは、縛るためではなく続けるためにある
便利な道具ほど、何でも任せられる気がしてきます。ただ、社内で使うなら、入れてよい情報の範囲、最終的に確認する人、どこまで業務に組み込むか。この3点を先に決めておかないと、あとで揉めます。揉めるのはたいてい、事故が起きたあとです。
そして、揉めた会社の多くは、そこで利用を止めます。「危ないから禁止」がいちばん簡単だからです。本当はルールが無かっただけなのに、道具のせいになる。もったいない終わり方です。
順番も大事です。まず使ってみて、困ったら決める、という進め方は一見すると現実的に見えます。ただこのやり方だと、最初の事故が「決めるきっかけ」になります。事故を教材にするのは、いちばん高い授業料です。
つまりルールは、縛るためのものではありません。安心して使い続けるための土台です。先に整えた会社ほど、導入が長持ちします。
決めておきたい5つ
細かい規定より先に、この5つを押さえます。どれも、会議1回で決まる内容です。
| 決めること | 具体的には |
|---|---|
| 入れてよい情報 | 顧客情報、機密情報、未公開情報をどう扱うか |
| 確認する人 | 出てきた内容を、誰が最後に見るか |
| 使ってよい業務 | メール下書き、議事録、要約などの可否 |
| 社外へ出す前の手順 | 公開文書や対外メールの確認の流れ |
| 共有のしかた | うまくいった使い方を、どこに残すか |
2つめの「確認する人」は、役職ではなく役割で決めると回ります。「部長が見る」にすると、部長が休んだ日に止まります。「送る本人が、送信前に必ず見る」なら、誰が担当でも成立します。
5つめを入れているのには理由があります。禁止事項だけを並べたルールは、現場から見ると「使うな」と同じに見えます。良い使い方の置き場所まで書いてあると、ルールが後ろ向きな文書になりません。
いちばん揉めるのは、1つめ
5つの中で、決めるのに時間がかかるのは「入れてよい情報」です。厳しくすると誰も使えなくなり、緩くすると事故が怖い。落としどころが見えにくい。
現実的なのは、情報そのものではなくプランで線を引くやり方です。学習に使われない契約のサービスなら、業務の情報を扱ってよい。無料や個人向けのプランなら、社外秘は入れない。人によって判断が揺れる基準より、契約で分けたほうが守られます。
それも難しければ、入れる前に名前と数字を伏せる運用でも構いません。大事なのは、どちらかに決めることです。両方を曖昧にしたまま走り出すのが、いちばん危ない。
「使ってよい業務」は、外に出るかどうかで分ける
3つめの「使ってよい業務」も、リストを作り込むと終わりません。業務は毎月増えるからです。軸を1本にしておくほうが長持ちします。社内で完結するものは任せてよい。社外へ出るものは、必ず人が最後に見る。
この軸で見ると、議事録の整形、資料の下書き、長文の要約、アイデア出しは、迷わず任せられます。一方で、顧客への返信、見積の文面、公開する記事、契約に触れる説明は、確認が入ります。新しい業務が出てきても、同じ問いを1つ当てるだけで判断できます。
i-Styleでも、記事の下書きや会議記録の整形はAIに任せていますが、公開の判断とお客様へ送る文面だけは人が見ています。線を引く場所は、規模が変わっても動かしていません。増やしたのは、任せる側の量だけです。
事故を減らすのは、前後2回の軽い確認
ルールを作っても、現場で曖昧なら運用は崩れます。効くのは、使う前に1回、使ったあとに1回の軽い確認です。厳密である必要はありません。
- check_circle使う前:この文章に、顧客名・金額・未公開の情報が入っていないか
- check_circle使ったあと:数字と日付と固有名詞が、元の資料と合っているか
- check_circle社外へ出す前:断定していい内容か、言い切りすぎていないか
完璧に止めることが目的ではありません。何を見れば止められるかが共有されているだけで、事故はかなり減ります。逆に、見る場所が決まっていないと、慎重な人ほど疲れて使わなくなります。
部門ごとに、少しだけ変える
全部門を同じルールで縛るより、共通の最低ラインを敷いたうえで、少しだけ調整するほうが実務的です。同じ道具でも、扱う情報が違えば危うさも変わります。
たとえば営業なら、顧客名と金額の扱いが焦点になります。人事なら、応募者の情報。経理なら、取引先と口座に関わる情報。制作や広報なら、公開前の情報と、事実確認の手順。共通ルールに、部門ごとの1行を足すだけで足ります。
配り方にもコツがあります。規程として掲示するだけでは、たいてい読まれません。使い始めるときに口頭で伝えて、あとから見返せる場所に置く。そして、迷った実例が出るたびに1行足していく。育てる前提のほうが、現場では守られます。
最初から全社を網羅した規程を作ろうとすると、たいてい完成しません。1部門で回してから広げるほうが、結果的に早く行き渡ります。
まとめ:A4で1枚から始める
5つを書き出して、A4で1枚に収める。そこから始めてください。長い規程ほど読まれず、読まれない規程は守られません。運用しながら、事故になりかけた場面を1行ずつ足していくほうが、実態に合ったものになります。
もう1つ。ルールを作ったら、それを守れる環境も一緒に用意してください。「社外秘は入れない」と決めたのに、業務で使えるプランが用意されていなければ、現場は個人のアカウントで使い始めます。見えないところで使われるより、見える場所で使ってもらうほうが、ずっと安全です。
冒頭の、メールをそのまま貼り付けた担当者。あの人を責めても、次に同じことが起きます。決まっていないことは、悪気なく起こる。ルールを作るというのは、誰かを叱らずに済むようにしておく作業でもあります。
ChatGPT の社内ルール設計、1 枚から一緒に整理します
「どこまで許可していいか分からない」「利用ルールを作りたいが、どこから始めればいいか迷う」── そんな段階からでも問題ありません。i-Style では、現場で回る形に落としていく前提で一緒に整理できます。
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